授業実践2026年02月13日

AI時代に必要な情報リテラシー教育の実践ガイド

生成AIが普及する時代に、生徒に身につけさせるべき情報リテラシーとは何か。具体的な授業実践例とともに解説します。


生成AIの急速な普及により、情報リテラシー教育の重要性がこれまで以上に高まっています。従来の「情報を検索し、評価し、活用する力」に加えて、「AIが生成した情報を適切に扱う力」が新たに求められるようになりました。

本記事では、AI時代に必要な情報リテラシーの要素と、それを育てるための具体的な授業実践例をご紹介します。

AI時代の情報リテラシーとは

AI時代の情報リテラシーは、以下の5つの要素から構成されます。

1. 情報の真偽を見極める力

生成AIは、もっともらしい文章を生成することができますが、その内容が必ずしも正確とは限りません。複数の情報源を確認し、信頼性を評価する力が必要です。

2. AIの特性と限界を理解する力

生成AIがどのような仕組みで動いているのか、何が得意で何が苦手なのかを理解することで、適切な使い方ができるようになります。

3. 適切な質問を設計する力

生成AIから有用な情報を引き出すには、明確で具体的な質問をする必要があります。この「プロンプトエンジニアリング」の基礎を身につけることが重要です。

4. 倫理的に使用する力

著作権、プライバシー、公平性など、AIを使用する際の倫理的な問題を理解し、適切に判断する力が求められます。

5. 人間にしかできないことを見極める力

AIが得意なことと人間が得意なことを区別し、それぞれの強みを活かす方法を考える力が必要です。

授業実践例1: AIの回答を検証する

対象学年: 中学1年生以上
所要時間: 50分
教科: 総合的な学習の時間、社会科、理科など

授業の流れ

まず、生徒に同じ質問をChatGPTに複数回入力させ、回答が毎回異なることを体験させます。例えば、「日本で最も高い山は何ですか」という単純な質問と、「江戸時代の庶民の生活について教えてください」という複雑な質問を試します。

次に、ChatGPTの回答を教科書や信頼できるウェブサイトの情報と比較させます。どの部分が正確で、どの部分が不正確または不完全かを検証させます。

最後に、なぜAIの回答に誤りが含まれる可能性があるのか、どのように情報の信頼性を確認すればよいかをグループで討議し、発表させます。

評価のポイント
- 複数の情報源を確認する習慣が身についているか
- AIの回答を鵜呑みにせず、批判的に評価できるか
- 情報の信頼性を判断する基準を理解しているか

授業実践例2: 効果的な質問の作り方

対象学年: 小学5年生以上
所要時間: 45分
教科: 国語、総合的な学習の時間

授業の流れ

まず、曖昧な質問と具体的な質問の違いを例示します。「環境問題について教えてください」と「日本の海洋プラスチック問題の現状と対策を、小学生にも分かるように説明してください」を比較させます。

次に、生徒に自分が興味のあるテーマについて、ChatGPTに質問を作成させます。最初は曖昧な質問から始め、徐々に具体的で明確な質問に改善していきます。

最後に、どのような質問をすると有用な回答が得られるか、グループで共有し、「良い質問の条件」をまとめます。

評価のポイント
- 質問を具体的に表現できるか
- 必要な情報を明確に指定できるか
- 回答の質を評価し、質問を改善できるか

授業実践例3: AIと著作権

対象学年: 中学2年生以上
所要時間: 50分
教科: 技術・家庭科、総合的な学習の時間

授業の流れ

まず、著作権の基本的な考え方を説明します。他者の創作物を無断で使用してはいけないこと、引用のルールなどを確認します。

次に、AIが生成した文章や画像の著作権について考えさせます。「AIが生成したものは誰のものか」「AIに他者の作品を学習させることは許されるか」などの問いを提示します。

具体的なケーススタディとして、以下のような状況を提示し、グループで討議させます。
- レポート課題でChatGPTの回答をそのまま提出する
- ChatGPTに小説を書かせてコンテストに応募する
- 画像生成AIで作った絵を自分の作品として発表する

最後に、AIを使う際の倫理的なガイドラインをクラスで作成します。

評価のポイント
- 著作権の基本的な考え方を理解しているか
- AIを使用する際の倫理的問題を認識できるか
- 適切な使用方法を自分で判断できるか

授業実践例4: AIと人間の役割分担

対象学年: 中学3年生以上
所要時間: 50分
教科: 総合的な学習の時間、キャリア教育

授業の流れ

まず、様々な職業や活動において、AIが得意なことと人間が得意なことを分類させます。例えば、データ分析、創造的な発想、共感的なコミュニケーション、倫理的判断などを取り上げます。

次に、将来の職業や社会において、人間に求められる能力は何かを考えさせます。AIが普及した社会で価値を持つスキルについて討議します。

最後に、自分自身がこれから身につけたい力、伸ばしたい力を考え、学習計画を立てさせます。

評価のポイント
- AIと人間の特性の違いを理解しているか
- 将来の社会で求められる力を考えることができるか
- 自分の学びを主体的に設計できるか

授業実践例5: フェイクニュースとAI

対象学年: 中学1年生以上
所要時間: 50分
教科: 社会科、総合的な学習の時間

授業の流れ

まず、実際のフェイクニュースの事例を紹介し、それがどのような影響を与えたかを学びます。生成AIによって、フェイクニュースの作成が容易になっている現状を説明します。

次に、フェイクニュースを見分けるためのチェックポイントを学びます。情報源の確認、複数の報道の比較、画像の検証方法などを実践します。

具体的な演習として、いくつかのニュース記事を提示し、それが信頼できるかどうかをグループで評価させます。その際、以下の観点で検証させます。
- 情報源は明記されているか
- 他のメディアでも報道されているか
- 画像や動画は本物か
- 感情的な表現で誘導していないか

最後に、情報を発信する側の責任についても考えさせます。

評価のポイント
- フェイクニュースの危険性を理解しているか
- 情報の信頼性を評価する方法を身につけているか
- 情報発信の責任を認識しているか

家庭との連携

情報リテラシー教育は、学校だけでなく家庭でも継続的に行うことが重要です。保護者向けに以下のような情報を提供することをお勧めします。

保護者向け配布資料の例

「お子様がAIを使う際の家庭でのルール作りについて」
- 何にAIを使ってよいか、使ってはいけないかを話し合う
- AIの回答を確認する習慣をつける
- 個人情報を入力しないことを約束する
- 使用時間や場面を決める

継続的な指導のポイント

情報リテラシーは、一度の授業で身につくものではありません。様々な教科や場面で繰り返し指導することが重要です。

日常的な指導の機会
- 調べ学習の際に、情報源の確認を習慣化する
- レポート課題で、AIの使用範囲と引用のルールを明示する
- 生徒がAIを使った際の良い例・悪い例を共有する
- 新しいAI技術が登場した際に、その特性と注意点を説明する

まとめ

AI時代の情報リテラシー教育は、単にAIの使い方を教えるだけでなく、情報を批判的に評価する力、倫理的に判断する力、人間にしかできないことを見極める力を育てることが目的です。

これらの力は、AIが普及した社会を生きる子どもたちにとって、必須のスキルとなります。教科の枠を超えて、学校全体で継続的に取り組むことが求められています。

本記事で紹介した授業実践例を参考に、自分の学級や学校の実態に合わせた情報リテラシー教育を展開してください。

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